SANARI PATENT ネット上の知財

Various Problems Concerning ICT : Protection of IP on Network, Capacity Building, MSE, PCT, World Patent, New Application Route:平成20年度内閣知財計画
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com Web検索SANARI PATENT
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1. ネット上における知的財産権の保護
(要約) ネットオ−クションやセカンドライフ等、バ−チャル空間における新たなビジネスモデルの展開において、商標や著作物の無断使用の問題が発生している。
  特にバ−チャル空間における商標の無断使用は、侵害行為の場所の特定が困難で、どの国の法律を適用法とすべきかも明確でない場合が多い。
(考察)商標権侵害のパタ−ンが多様で、ダイリュ−ションやポリュ−ションに該当し、法的侵害・非侵害の境界線上の行為があることは、情報通信以外のメディアにおいてもみられるところであり、商標制度の一般的検討に委ねるべきであるが、ネット映像に関する侵害構成要件該当性の立証について、特別の検討が必要である。
2. ス−パクリエ−タ−の育成・支援
(要約) 技術革新により、知識と創造力を持つ全国民が自宅のPCでイノベ−ションの担い手となり得るから、その中から、世界に発信するに値する新たなビジネスモデルを創出できるス−パクリエ−タを育成・支援すべきである。
 (考察)ス−パクリエ−タ−は、情報処理推進機構が毎年度、プロジェクトマネ−ジャ−から優秀な開発人材を見出して認定する制度であるが、プログラマ−には多様な段階の資格制度があるのに対して、「クリエ−ト」を主眼とすることに国際競争的意義があると考える。
3. 質の高い特許権の取得とイノベ−ションの促進
 (要約)ソフトウェア技術は、ライフサイクルが短く、革新が高速であるから、発明を早期に権利化し新ビジネス創出することが重要である。
  米国では、ソフトウェア特許の権利化に際してコミュニティの知識・情報を活用するコミュニティ・パテント・レビュ−が2007年7月から試行されている。
 (考察)「質の高い」という語の意味が不明確である。法的安定性という意味と、新規性・進歩性・非自明性の特許要件のレベルが高いという両様の意味がある。この点を明確にして、方法論に及ぶべきである。
4. 中小・ベンチャ−企業における知的財産マインドの徹底
 (要約) ソフトウェア開発の受託が第1次・第2次の中小・ベンチャ−受託企業により請け負われる場合、知的財産権の帰属や著作者人格権の取扱いに関する契約の不備な場合がある。
 (考察)関係ガイドラインの普及が必要であるが、中小・ベンチャ−企業のレベルは極めて多様であることを踏まえる必要がある。
5. 情報通信分野・知的財産権取得のグロ−バル化促進:
 (要約) 特許審査ハイウェイの拡充を始めとして、世界特許の実現に向けた取組が望まれる。
  特に情報通信分野の特許の国際出願は、米国・中国・欧州を中心とした特定の国に対するものが多いから、第1国になされた出願を、第2国への正規の出願とみなし、翻訳文の提出期間を優先日から30月まで猶予する「新ル−ト提案」が日米欧特許庁で検討されており、その早期実現を推進すべきである。
  また、PCT国際出願手数料の値下げを実現する必要がある。
 (考察)特許審査ハイウェイは、各国特許庁の実務レベルで実施できるから、現在までに協定できた4国について、実効を挙げると共に、相手国数の増加が望まれる。世界特許は、特許審査ハイウェイの全面化という実質的な実現によることが適切である。
6. ノウハウ流出防止のため、特許出願の峻別:
 (要約) 特許出願の明細書には、重要なノウハウが含まれている場合があり、わが国でのみ出願している場合には、特許公開によりこれが海外に一方的に流出する。重要なノウハウを含む特許出願については、海外での確実な権利化の戦略と、出願の可否の峻別が必要である。
 (考察)情報通信分野について特に、ノウハウ流出防止が必要である事情を、今次報告に補完されたい。
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情報通信、ノウハウ、特許審査ハイウェイ、セカンドライフ