SANARI PATENT 情報通信分野の特性

Characteristics of IP on the Info-Telecom Fields :平成20年度内閣知財計画における情報通信分野の特性対策
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com Web検索SANARI PATENT
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  知的財産政策を各分野の特性に即応して策定することが、過年度の内閣知財計画との相違点である。この特性の摘出結果を、内閣知財戦略本部の担当プロジェクトチ−ムが報告した(2007-10-30)。以下これを要約し、考察する。
1. 一製品多数特許に対応するライセンス態様:
(要約) 情報通信分野では、一つの製品・サ−ビスに多数の技術が要求され、関連特許権の独占が困難であるから、複数企業による相互利用が必要である。従って、クロスライセンスやパテントプールが活用される。
(考察) クロスライセンスとパテントプールの使い分けを、協定企業の数によっているような報告の記述になっているが、プ−ルという共用機構を設定するか否かが、一次的な相違である。クロスライセンスにも包括ライセンス契約や特許権の価値評価結果を差額決済するものもあり、細分した考察を要する。
2. 技術進歩・市場変化の高速度に対する迅速な制度対応の必要性:
 (要約) 技術革新によるイノベ−ションの担い手やその成果の活用者も急増し、新しいビジネスモデルが突如出現して経済社会を風靡する場合も多い。従来制度で想定外の知的財産問題に迅速に対応できないと、イノベ−ションを阻害する。
 (考察)著作権について、フェアユ−ス等の基本的考え方を確立していないので、現時点においても、イノベ−ションを阻害している。
3. 相互接続性(相互運用性)の確保:
 (要約)情報通信分野では広く接続されて初めて価値を生むものが多い。個々の製品の機能を相互に呼び出すプロトコル、インタフェイスのといつが先ず必要である。従って、技術標準が重要である。
 (考察)ハ−ドにおいての電気通信インフラに先ず言及すべきである。
4. 知的財産制度におけるソフトウェアの特殊性:
(要約)ソフトウェアについては、プログラムの表現が著作権として、ソフトウェアの発明が特許権として保護される。
近年、ソフトウェア関連の特許出願が増加し、開発者が意識しない特許権侵害が発生する。また、ソフトウェア特許については、マニュアルも先行技術文献となる場合が多く、関連文献の網羅的調査が困難である。
 (考察)特許権侵害と著作権侵害の双方に着眼すべきである。

5. 権利者の分散と権利関係の錯綜:
(要約)要素技術の多様化、製造方法の複雑化、参入障壁の低下によってイノベ−ションの担い手が多様化し、知的財産権の権利者の分散とそれに伴う権利関係の複雑化が進んでいる。従って各企業は、競争力の源泉として知的財産権を確保すると共に、技術を相互利用する必要が高まっている。
(考察)包括ライセンス契約等の締結を円滑にする業界の態勢を確立すべきである。
6. 知的財産制度の本来目的を逸脱する権利濫用の発生:
(要約)パテント・トロ−ルは、外見上、特許権を有する正当な検討者であり、従って、情報通信分野における知的財産権の正当な権利行使と知的財産権の濫用の境界を見極めつつ対応する必要がある。
(考察)わが国にも、パテント・トロ−ルが発生する可能性がある。米国における政策対応を注視する必要がある。
7. ネットの普及とソフトウェア・イノベ−ションの進展:
(要約)7-1 SaaSセカンドライフSNS等の新しいビジネスモデルが創出されているが、共通するキ−ワ−ドは、「ブロ−ドバンドネットワ−ク」、「オ−プン化」、「分散化」である。わが国の知的財産制度は、必ずしもこれら新しいビジネスモデルに対応していない。
7-2 違法コピ−等、ネットワ−ク上での知的財産侵害行為が増加している。
(考察)セカンドライフの商取引機能に対応する必要がある。コピバイエル問題は、著作権サイドからの解決を要する。
8.オ−プンソ−スソフトウェアの浸透:
オ−プンソ−スソフトウェアが、著作権保護に対するアンチテ−ゼとして登場した側面があることにかんがみ、著作権との調整が全うされていない。
8. インド・中国等の情報通信産業の急速な発展:
これら諸国を、わが国のアウトソ−ス先や市場として捉えるだけでなく、競争相手として認識し、知的財産戦略を策定する必要がある。
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情報通信、オ−プンソ−スソフトウェア、パテント・トロ−ル、著作権