SANARI PATENT メルクの骨粗鬆症薬特許

Patent of Osteoporosis Medicine: メルク「哺乳動物の骨粗鬆症薬」特許無効審決取消請求を知財高裁が棄却(2007-10-18)
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com Web検索SANARI PATENT
 ヒトもペットも含めて、哺乳動物の骨粗鬆症が重要な話題になっている。街の開業医の窓口にも、動物病院の壁にも、「骨粗鬆症のテストいたします」と宣伝されている。
 従って、骨粗鬆症関連の治療薬・予防薬の開発も活発であるが、今次知財高裁判決は、メルクの標記特許に関する。

1. 事案の概要(SANARI PATENT要約)
1-1  メルク アンド カンパニ−, インコ−ポレ−テッド(以下「メルク」)は、「骨吸収を抑制する方法」発明の特許を有するが(設定登録日2003-10-10)、ユ−ロドラッグ ラボラトリ−ズ リミテッド(以下「ユ−ロドラッグ」)、この特許の無効審判を特許庁に請求した。
1-2  特許庁は、この特許の無効と審決した(2006-4-13)。無効審決の理由は、「この発明は、特許出願前に日本国内または外国において公然実施された発明に該当しないこと」という特許要件を充足しないこと(想到容易性)などである。
1-3  メルクは、この無効審決の取消を知財高裁に請求したが、知財高裁は、この取消請求を棄却した(2007-10-18)。

2. 今次知財高裁の判断理由の要素(SANARI PATENT要約)
2-1 従来技術に、「消化管障害軽減」に関する「動機づけ」が存在した。
2-2 従来技術の、「episodic」という表現は、「once/week」の意味と認め得る。
2-3 従来技術における「dosing problems」とは、コストの問題と対比して、服用にに伴う問題、すなわち、副作用の問題と、投与の難しさの問題の両者を意味するものと解するのが自然である。
2-4 出願当時の技術常識に、この発明への重大な阻害事由があったとは認められない。
2-5 従来技術には、投与量に関するこの発明への示唆の存在が認められる。
2-6 審決は、「毎日経口投与に用いるための、哺乳動物における骨粗鬆症を治療するための薬剤組成物」という発明について認定しており、これに基づく審決の判断に誤りはない。

3. SANARI PATENT所見
  バイオの知財専門家は、メルクの主張について、今次判決全文を精査・理解する必要がある。
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