SANARI PATENT Recycle of Ink Cartridge

Recycle of Printer Ink Cartridge :プリンタ−インクカ−トリッジの再利用について増田 守弁理士の意見
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com Web検索SANARI PATENT

 最高裁のプリンタ−インクカ−トリッジ 関係判決について、増田 守弁理士の意見の前半を、このサイトの2007.12.01 において考察したが、同弁理士の論説の主眼である後半・「特許と再利用、調和の方法」の論旨を考察する。

1. 論説:特許権と公共の福祉
  「憲法29条は、1項で財産権の不可侵を宣言し、2項で「財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律で定める」としている。特許権もまた、技術の発達や産業の振興に有力な手段であるといっても、権利を行使する場合は公共の福祉に反しないように留意して規定を解釈適用し、適切な施策を講じるべきである。特許制度は、資源リサイクルという公共的要請との調和を図るべき時期にきている。」
(考察)
 日本国憲法改正案として自民党の最終案は、知的財産権についての条項を新設すると共に、財産権の一つとしての知的財産権が公共の利益と調和するよう特に留意すべき旨の、「特段留意条項」を設けている。内閣知財戦略本部の平成19年度知財計画にも、「知的財産権と他の価値との調和」が強調されている。

2. 論旨:調和の第1の方法
 「上記調和のための第1の方法は、リサイクル仕様の設計を進めることである。洗濯用洗剤や調味料、化粧品など、容器の耐用期間に比べて中身の消費期間が短い商品では、メ―カ−自身が詰め替え用品を販売しているのが普通だ。こうした商品は省資源・循環型社会にマッチし、消費者からも支持されている。
 そのビジネスモデルを踏まえ、特許製品がこの類のものである場合には、ユ−ザ−が中身を詰め替えて再使用できるような設計を、メ―カ−自身が積極的に行い、行政側もそれを強力に推進すべきである。」
{考察}
 パソコンインクカ−トリッジの場合、「容器の耐用期間に比べて中身の消費期間が短い商品」に該当するか、問題がやや複雑である。「中身の消費期間」が「消費」によって尽きた場合に、詰替えを即時行わなければ、スポンジ部分の乾燥によって容器の耐用期間がその時点で尽きる。
 また、ユ−ザ−の詰替え技術が未熟であると、プリンタに回復困難な故障をもたらす(インク漏れによる用紙の湿潤で紙詰まり除去が不能になるなど)。
 従って、このような不都合を発生しないような、操作簡易かつ安全確実な「ユ−ザ−詰替え機構」の具備をメ―カ−に要求することになり、その技術開発の可能性とコストが課題になる。

3. 論説:第2の方法
 「第2の方法は、特許法の「裁定実施権制度」の弾力的運用である。プリンタ−メ―カ−が十分な量のインクカ−トリッジを市場に供給していても、まだ使えるインクカ−トリッジを1回限りの使用に限定するのなら、資源の有効利用、環境負荷の軽減の見地から妥当でない。」
 「特許権者がリサイクル仕様の特許製品を設計しようとせず、リサイクルシステムを構築していない場合にも、裁定実施権制度によって、他の業者がリサイクル品を製造販売することを認めるべきである。」
 (考察)
 知的財産権担当の裁判所専門委員・増田 守弁理士は、特許法83条のみ引用されたが、93条を含めて、内閣知財戦略本部のご検討を要望する。
(ア) 論説:結論
 「公共的要請からの特許権行使の制限は、特許権者も受忍すべきである。」
 (考察)
 「公共的要請」の成立要件を、標記論説を参照しつつ、深耕する必要があると考える。
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Patent、Public Request、インクカ−トリッジ、最高裁特許権
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