SANARI PATENT 環境分野の知財戦略

2008 IP Strategy for Environmental Fields: 内閣知財戦略本部「知的財産による競争力強化専門委員会」の「環境分野プロジェクトチ−ム」報告(2007-10-30)の考察
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com Web検索SANARI PATENT
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 平成20年度内閣知財計画策定のため、標記報告がなされたので、考察する。
1. 環境分野知財戦略検討の視点(SANARI PATENT要約)
1-1  環境問題は、温暖化のような「地球全体の問題」と途上国における急速工業化随伴公害のような「途上国問題」と、双方にわたっている。
1-2  わが国は現在、資源の制約と高度成長の2大課題を克服する経験から、諸外国より高度な、「省エネ」、「石油代替エネ」、「浄化」、「リサイクル」の技術を獲得した。
2. 環境分野の特性(1と同)
2-1 国際的枠組みや環境政策が与える影響
2-1-1 規制水準の法的高度化による技術開発の不可避
2-1-2 新エネ普及の積極的誘導策の導入
2-1-3 国際条約・国際規格への取組
2-2 グロ−バル環境問題と地域環境問題
2-2-1 グロ−バル環境問題に対応する先端技術
2-2-1-1 国際競争の激化と国際標準獲得への取組
2-2-1-2 高投資リスク
2-2-2 地域環境問題に対応する特定技術
2-2-2-1 ロ−カルニ―ズへの対応。CDM(Clean Development Mechanism)に基づく国際協力技術を含む。
2-2-2-2 制度整備。環境規制、知財保護措置未整備。

3. 知的財産権の対象になっている環境技術の普及方法
    その知的財産権所有企業の選択肢としては、
3-1 権利をオ−プン化し、幅広く他の事業者に製品化させる
3-2 特定の事業者に権利の実施権を付与し、製品化させる。
3-3 自ら独占的にその技術を実施し、製品化する。
いずれにせよ、その事業者は、自らの主体的判断に基づいて、様々なビジネスモデルを追及し、環境技術の普及を図るべきである。(SANARI PATENT 注:それが履行されない場合の措置に言及すべきである。)
4. グロ−バル環境技術に関する課題
4-1 国際的取組が限定的なものにとどまっていることを打開する。
4-2 環境分野における知的財産権の取得が、自動車などの一部を除いて国内出願にとどまっていることについて、外国出願を促進すべきである。
5. 地域環境技術に関する課題
5-1 途上国では、技術水準が低くても、コストが低い技術に対するニ―ズが高い。
5-2 途上国では、環境技術についても、知的財産権の保護が適切でない。
5-3 中小企業の国際環境分野への進出意欲が十分でない。

6. 今後の対策
6-1 先端的環境技術の一層の向上
6-2 政策的措置の積極的活用
6-3 国際展開の強化
6-4 環境分野における知的財産政策の推進

7. SANARI PATENT所見
  この報告は、共立理化学研究所・岡内完治代表取締役と、トヨタ自動車・江崎正啓理事を委員として作成された。江崎委員がトヨタの知的財産部主査であり、知的財産政策一般の強化に論議が費やされている観もあるが、環境分野の知的財産問題のうちに、業種分野別の特異性と課題が存在することを踏まえてまとめられたと解する。
換言すれば、わが国の企業にとって、環境分野への重点指向がどのような経営戦略上の意義を持つか、すなわち、それによって利益を得る要素、および、不利を免れる要素を先ず具体的に企業分野別に摘出しないと、企業の立場での一層の環境分野展開を促進する力に欠けることになると危惧する。
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トヨタ、環境分野、途上国、地球温暖化、内閣知財戦略本部